製造業の現場で仕事をしていると、手元にある部品に問題が発生することってよくありますよね。例えば設計変更で追加工が必要になったり、寸法公差から外れていたり、あるいは加工漏れが判明したり……。そんなとき、修正を依頼する加工メーカーを探すのは案外難しいものです。
愛知県春日井市にある部品加工メーカー、榊原工機には、「トラブル発生」「困った」「助けて」というお取引先からの連絡が日常的に届くそうです。そこで今回は、他社製作品の修正事例について、榊原社長に詳しく聞いてみました。

特急の修正依頼にも対応しています
「先日もこんな相談がありました」と、榊原社長が見せてくれたメールはこちら→
「特急ばかりすみません。トラブル案件助けてほしいです。
○○○○の穴位置を修正したいです。」
という、いつも加工をご依頼いただいている商社さんからヘルプ依頼でした。

対象の部品はおそらく中国で製造したと思われますが、「届いてチェックしてみたら穴位置が違っている」というよくある話です。商社さんからお客様への納品予定日は2日後。そこで榊原工機に「トラブル案件、助けて」という依頼が来たというわけです。
榊原社長は「いろいろな商社さんから、毎週のように『明日までに対応できませんか』という依頼が来ます。生産計画などで難しいケースもありますが、既に信頼関係の構築できている取引先であれば、できる限り対応するようにしています」と話してくれました。
榊原工機によく届く修正依頼とは……
そこで榊原社長に「榊原工機によくくる他社製作品の修正依頼って、どんなものがあるんですか?」と聞いてみました。
- • 公差が外れているから、公差に入れてほしい
• 設計変更が発生したから、追加工をお願いしたい
• 穴の加工忘れが見つかったので、追加工してほしい
• 焼入れ後に加工忘れが判明。HRC60の焼入れ鋼に追加工が必要
• 焼入れ鋼のタップ加工が抜けていた
• 現物合わせで加工してほしい などなど……
このような相談に対し、榊原工機の社内に設備がある切削やワイヤーカットの加工であれば、生産工程を組み替えるなどしてできる限り対応しているということです
榊原工機で修正対応できる理由
特急品の場合、基本的には翌日納品を目安に対応。もちろん数が多い場合や、加工できないものもありますが、社内に設備がある切削加工やワイヤーカット加工であれば短納期対応が可能なケースが多いとのこと。これは「明日までに何とかしなきゃ」と青ざめている担当者にとってはまさに「神対応」と言っていいと思います。
榊原社長は「特急品で利益を出そうとは思っていません。お客様が困ったときに力になれる会社として認識していただき、それをきっかけに長いお付き合いができればと思って、できる限りの対応をしています」と話してくれました。
ただし、全ての相談に対応できるわけではなく、焼入れや表面処理など外注が必要な工程を含む場合は対応できないこともあるのでご注意ください。
実際の修正事例&追加工事例をピックアップ
ではここからは、実際の修正/追加工事例を見ていきましょう。

こちらの部品は市販のギアが支給品で、次の加工をしました。
・ネジ穴4か所を開ける
・全長を薄く削る
・ギアの凸になっている外周を一周削る(直径を小さくする)
ギアにキズがつかないように、ギアの直径と爪の直径のRを合わせてから、細心の注意をして加工しました。確かに、ギア1個を全加工で製作するよりは安かったと思われます。

こちらは他社で加工した部品に追加工の依頼。おそらく中国製造で、船で輸送中に設計変更になったのでは?と思われます。加工内容は
・穴を6か所開ける
・溝を3か所追加する
・マジックで書いたR部分の加工、○部分の穴あけ
しかも焼入れ済みだったので、焼入れ材の加工ができる特殊刃物を使って超特急で加工して、無事納期に間に合いました。

こちらの依頼は、消耗品の修正にかかわる追加工でした。滑り止めが摩耗した爪のパーツに
・溶接(ステライト盛り)で2~3mm肉盛り
(写真の矢印あたり、波形の上の部分にステライト盛りをしました)
・エンドミルで削って表面をキレイに切削
・写真の左右方向の溝加工
を行いました。なかなかできるところが少ないと思いますので、ユーザーさんは喜ばれたことと思います。

こちらの部品は製品図面がなく、お客様と一緒に寸法を取って現物加工した事例です。
・旋盤でパイプ部分を製作
・赤い塗装面の上にパイプ部分を溶接
・最後に先端の形状を回り止め形状に加工
・旋盤で作って溶接して、先端の部分だけを最後に加工
現物合わせの加工事例ですね。

これはネジ穴を4か所、追加工のご依頼でした。
昨日預かって今日納品、という特急品でした。
まとめ:「金属加工相談室」を開設しました

榊原工機では、オンラインで金属加工について相談室できる「金属加工相談室」を開設しました。オンラインで図面や写真を見ながら、榊原社長に具体的な相談ができます。
今回ご紹介した修正加工の相談だけでなく、加工品の図面や写真を見ながら加工可否や納期、価格などについて、榊原社長に直接ご相談いただけます。お手元に図面がある時にはぜひご活用ください。
榊原工機 金属加工相談室
https://www.sakakibara-kouki.co.jp/online/
(聞き手=ものづくりライター 新開潤子 https://office-kiitos.biz/)
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