切削加工のプロ、榊原工機の榊原社長に突撃して、加工のリアルなところをあれこれ聞いてみるシリーズ。今回は最近お問い合わせが増えている「三次元加工」で、普段はなかなか見られない3次元データの作業画面を見せていただくことができました。
今回はこちらの加工品を例に見ていきます。上面だけを3次元加工で仕上げているため、模様が出ているのが見えるでしょうか?
この部品は外寸30x40x50mmの大きさで、HPM-1という金型向けの材料を使っています。材料が硬いため少しずつ、ゆっくり細かく加工していく仕事です。今回はこれを2種類の機械を使って加工しました。
工程① ワイヤーカット
この機械「ワイヤー放電加工機」は、通称ワイヤーカットと呼ばれています。上下にピンと張ったワイヤーに電気を通して、少しずつ金属を溶かしながら切っていく機械です。今回の加工では、横の4面をワイヤーカットで加工して寸法を出していきました。
工程② CAD/CAM プログラム作成
では、いよいよ今回初公開のCAD/CAMの画面を紹介していきます。ちなみに、CAD/CAMとは、
○CAD(Computer-Aided Design)はコンピュータを使って設計を行う技術/ソフト
○CAM(Computer-Aided Manufacturing)はそれを製造に適用する技術/ソフト
の略になっています。
こちらはCADの画面で、お客様から3次元CADの設計図を支給いただき、加工する面を指定します。事例ではオレンジ色の面を3次元加工で削っていくことになります。
続いて画面左側に出ているのがCAMの画面で、ここでは刃物の動きをシミュレーションします。部品と刃物が干渉しないか、逃しが適正かなど、実際の機械で削る前にパソコン上でシミュレーションで確認して、間違いのないように加工する準備をします。
こちらは刃物の動きを確認するクローズアップ画面です。刃物がどのように動いて削っていくか、要求通りの精度で加工できるか、などを細かく確認していきます。このように、3次元加工の場合は加工を始める前の確認作業が多くなります。複雑な形状の部品になると大変ですが、品質を確保するために大切な工程です。
こちらは切削加工の条件を入力する画面です。回転数や送りのピッチを細かく設定していきます。全ての項目を正確に入力しないと機械がその通りに動かないので、集中力が求められる大変な仕事です。
条件設定によって加工時間や加工品質が大幅に変わってきます。昔は職人の勘とか腕とか言われていた時代もありましたが、今は回転数が高速になってきたこともあり、榊原工機でも条件表を作って切削条件を平準化して設定しています。
今回は送りピッチが3/100mm、つまり刃物を0.03mmずつずらしながら削っていくという、大変繊細な作業になりました。
工程③ マシニングによる3次元加工
ここまで準備ができたら、ようやく機械による実際の加工に入ります。マシニングセンターはプログラム・シミュレーション通りに動きますので、シミュレーションがしっかりできていれば問題は発生しにくくなります。逆に、それだけCAD/CAMのプログラムとシミュレーションの工程が大切、ということですね。
この部品、1個で受注しました
そして実はこちらの部品は単品もので、1個で受注しました。マシニングによる三次元加工って、1個でも100個でもプログラムや段取りの手間は同じですので、1個で引き受けてくれる工場は多くありません。
しかも、お急ぎと言うことだったので、ワイヤーカットからマシニングによる三次元加工までを1日でやりきりました。そんなところもお客様には喜んでいただけたのでは、と思っています。
皆さまも1個の単品もの、試作品、小ロット品、特急の加工などがありましたら、ぜひ榊原工機にご相談ください。最短翌日発送で、皆さまのお力になれるようにがんばります。
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