製造業で仕事をしていると、旋盤加工やマシニング加工など「金属加工を外注する」という業務を担当することもあると思います。ただ、部品調達を専門にしているのでなければ「外注したいけど良い方法がわからない」という方も多いのではないでしょうか?
そこで、金属加工歴42年、加工メーカーを創業して35年という金属加工のプロ、有限会社榊原工機(@愛知県春日井市)の榊原社長に、「旋盤加工を上手に外注する方法」を教えてもらいました。
結論から言うと、「まとめて依頼できる加工屋さんに頼むのがベスト!」とのこと。順番に見ていきましょう。
目指したいのは「良品を、なるべく安く、納期までに集める」
最初に、今回のテーマである「上手に外注する」を考えてみたいと思います。
そもそも、旋盤加工、マシニング加工などの外注手配をする場合、目指したいのは「良品を、なるべく安く、納期までに集める」というところではないでしょうか? ただ、これが案外難しい。
というのも、外注加工には次のような難しさがあると思います。
【旋盤加工を外注する場合の課題】
・発注先:加工屋さんをよく知らない場合、どの会社に発注したら良いかわからない
・価格面:図面ごとに見積して加工する(定番品ではない)ので、適正価格がわかりにくい
・コミュニケーション面:図面の解釈や仕様の細かい点で認識の相違が起こりやすい
・品質面:「良品」の基準の意識の統一が難しい
・納期管理:複数の加工屋さんに発注する場合、進行管理・品質管理に手間がかかる
他にもいろいろありますが、外注加工で「良品を、なるべく安く、納期までに集める」というミッションを達成するためには、これらの課題を乗り越えていく必要があります。
依頼先は「加工屋さん」か「仲介サービス」のいずれか
旋盤加工の外注方法には主に2つの選択肢があります。それぞれのメリットとデメリットを見ていきましょう。
1. 加工屋さんに直接依頼する
メリット:
・加工に関する豊富な知識を持っているので、より良い加工方法のアドバイスが得られる
・マージンが発生しないため、比較的安価に依頼できる
・図面に関する疑問や質問を直接やり取りできる
・見積が早い(榊原工機では、メールをもらったら即答しています)
デメリット:
・加工屋さんごとに得意/不得意分野があり、1社に全てを任せるのは難しい
・複数の加工屋さんに仕事を割り振る場合、進行管理に結構な手間がかかる
直接発注してもらうことで、特に新しく作る製品については、ものづくりに対するアドバイスがもらえるのが大きなメリットです。特に榊原工機では豊富な加工経験から、図面を見て気になったところがあれば都度確認しているそうです。例えば
「この材質でこの形状は良くないよ」
「ここの部分、肉厚薄すぎるから危ないよ」
「このメッキだと、完成品で公差外れちゃうよ」
「これくらいの硬度なら、こういう材料使うといいよ」
というような具体的なアドバイスをしているということで、「開発案件で、加工に詳しくない発注者・設計者の方にはお役に立てているのではないか」ということでした。
ただ、一般的に加工屋さんには営業体制が整っているところが少なく、なかなか存在を知ってもらう機会がありません。そこで榊原工機ではホームページやインスタの発信を継続し、加工技術をPRするためにパターやランタンを作り、見積依頼を直接いただけるようにがんばっているとのことでした。
2. 商社やマッチングサービスなど、仲介サービスを活用する
メリット:
・手配を一括して任せられる
デメリット:
・加工品質が商社担当者の知識に左右される
・図面に記載のない情報について、直接のやり取りができない
・中間マージンが発生し、コストが上がりやすい
・部品が数社間を移動するため、納期が長くなりがち
商社さんや加工マッチングなど、マッチングサービスの活用にもメリット/デメリットがありますね。
ただ、商社さんからの依頼案件で加工をする際、榊原社長は過去にこんな実例を経験しているそうです。
実例① アドバイスを聞いてもらえず再製作
材料の特性上、図面通り加工すると完成品に反りが出そうだったので「 図面修正された方がいいのでは?」と提案したが、「図面通り作ってください」と言われた。指示通りそのまま加工したらやっぱり反った。お客様の費用負担で再製作になり、2回分の加工費をいただくことになってしまった。
実例② 安さ重視の発注で、特急で再製作
商社さんが、価格重視で中国の加工業者に発注。輸入して出荷前検査をしたら公差から外れていたが、納期がギリギリだったため榊原工機に「超特急」で修正・再製作を発注することになり、結局高くついてしまった。最初からうちに頼んでくれれば良かったのに……。
実例③ 同じ図面の見積依頼があちこちから届く
発注者さんが相見積をあちこちに依頼しまくって、3社の商社さんから同じタイミングで同じ図面の見積依頼が届くこともよくある。なるべく安く、という気持ちはわかるけど、ねぇ……。価格だけで選ばれる案件なんだ、と思ってしまいます。
他にも、
・図面をあっちこっちに振りまくって、結局ちゃんとした製品が入らなかった
・値段重視で安いところを探して発注したら、不良品が多発した
・図面にある材料で指示通りに加工すると公差に入らないので、後工程で処理が必要になるが、設計者も発注者もそれを知らずに手配した結果、公差から外れた製品ができた
こんな事例を聞いてしまうと、外注って本当に難しいですね。
加工屋さんへの直接発注と仲介サービスの活用、どちらの発注方法もメリット/デメリットがある状況ではありますが、これを解決できる理想的な方法はないのでしょうか? その答えが、冒頭にお伝えした「まとめて依頼できる加工屋さんに頼むのがベスト!」ということです。
内製できない部品も手配してくれる加工屋さんは貴重
「まとめて依頼できる加工屋さん」というのは、社内でできる加工は社内で対応し、出来ない加工がある場合は協力会社に依頼して手配してくれる会社のことです。これなら加工屋さんの専門知識と商社のワンストップサービスの「いいとこ取り」をして、効率良く外注の手配をすることができます。
「手配もできる加工屋さん」に依頼するメリット
1. 直接コミュニケーションができることで、高品質な加工と助言が得られる
2. 一括発注による管理工数の削減
3. 中間マージンの削減によるコスト最適化
これらのメリットを活かすために、どのようにお願いするのがベストなのでしょうか?
榊原社長に聞いてみました。
お手元の図面を全部見せていただくのがおすすめ
榊原工機にまとめてお願いするときのコツは「お手元の図面を全部見せていただくのがおすすめ」です。
というのも、榊原工機で対応できる加工かどうかは、発注者側からはわかりません。そこで、図面を確認した上で、自社で加工できる/できないに分類し、加工できないものはすぐに協力会社に確認して、まとめて見積を回答します。このあたりはプロに任せていただいた方がいい結果になることが多いと思います。
この方法で発注することで、進行管理も品質管理も榊原工機が一括で担い、さらに長年の経験を活かしたアドバイスも提供できるようになります。榊原社長も長いお付き合いを考えて見積りしているので、一回の取引で過剰な利益を乗せることもありません。
「加工側から見たアドバイスをするからといって、追加料金やコンサル料などは発生しません(笑)。見積通りの加工費で、私たちの経験・知見を活用してもらえるので、コスパは結構良いと思いますよ」
なお、このような形で依頼する際のお願い事項が2つあります。
【図面をまとめて依頼する際のお願い事項】
・電話だとわからないことが多いので、図面を送ってください。
・値段が決まっている場合は先に言ってもらえると「できる/できない」を即答します
いうことでした。
「旋盤加工を上手に外注する方法」のまとめ
「旋盤加工を上手に外注する方法」このページでお伝えしたポイントは次の通りです。
・加工屋さんへの直接発注と仲介サービスの活用、どちらもメリット/デメリットがある
・部品加工の上手な外注のコツは「まとめて依頼できる加工屋さんに頼むのがベスト」
・榊原工機では、手のひらサイズの部品加工はほとんど社内加工できる
・必要に応じて外注も使うこともありますが、当社の責任できちんと検査して納品します
商社さんと加工屋さんは「デパートで買うか、製造直売で買うか」という違いに似ています。
・デパートには何でも揃っているけど、価格は高め。
・製造直売はラインアップが限られているけど、生産者とコミュニケーションしながら、直接安く購入できる
この違いを踏まえて、お手元に図面があるときは、旋盤加工歴約40年のプロがいる加工屋さん、有限会社榊原工機にご相談ください。
榊原工機は愛知県春日井市にありますが、名古屋市、愛知県、東海地方だけでなく、全国からさまざまな加工のご依頼をお請けしています。
見積依頼、お待ちしています!
榊原社長、今回も詳しく教えていただきありがとうございました!
(聞き手=ものづくりライター 新開潤子 https://office-kiitos.biz/)
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